心の香り*(中国映画)
またまた授業で鑑賞した映画です*
舞台は中国なのですが、重要なポイントで台湾が絡んでいて、その形がとても切なく、心に残る作品になりました。
映画に関連することも書こうと思いますので
とても長文の記事になっております(^^;;
映画の原題は『心香』です。
1992年 孫周監督の中国で製作された作品です。
以下、簡単なストーリーの概略です。
*ネタバレ注意です
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主人公は京京(ジンジン)という少年です。
京京は母の影響で京劇を習っている北京の少年です。彼は将来も期待させるほどの才能があります。
そんな京京は両親の両親は現在離婚調停中で、離婚が成立するまで京京の母は京京を自分の父が暮らしている南方の広東省へ預けます。
実はこの祖父は元京劇の名優なのです。
同じく京劇女優であった最愛の妻と死別し、北京を離れます。
また、娘(京京の母)の結婚を反対し、娘は家を飛び出し、娘との間に深い溝が生まれ確執してしまいます。
なので、祖父は京京が今回自分の元へ来るまで、こんなに成長した孫が自分にいるとは知らなかったのです。
そして、この祖父、変わり者です。
昼間から酒は飲むは、やたら大声で変な歌を歌うは、最初京京は全く祖父に懐きません。
そこへ登場するこが蓮姑姑という、近所へ住んでいるおばさんです。
この蓮おばさんは、台湾へ渡り離れ離れになってしまった夫を持ち、1人で暮らしています。
*蓮おばさんの夫は1949年に台湾へ渡っています。当時このように中国と台湾で離れ離れになってしまう家族や夫婦は多かったそうです。
蓮おばさんは、大変な仏教信仰者で、いつも仏教の教えを受けた優しい心で京京や祖父と接します。
( 私自身、劇中の蓮おばさんの言葉がどれも考えさせられる台詞でずっとおばさんを見ていたかったです)
蓮おばさんや、近所の子供たち、周りの存在もあって、京京は少しずつ祖父と関係を作り上げていきます。
そして、この蓮おばさんと祖父はただの近所付き合いではなく、お互い伴侶を失った者同士心を許し合う存在となっていくのです。
祖父も蓮おばさんもそれぞれ、
最愛の伴侶と巡り合い、夫婦2人の歴史を育んで行き、そして失う形で別れ、傷つき、もう誰も愛さないだろう、自分は死ぬまで伴侶だけを想いつづけるだろう。
そう思っている者同士だったのでしょう。
しかし、そんな似た者同士が出会えば、心が近くなるのは自然なことでしょう。
2人は心を寄り添い、支え合って生きています。
京京が祖父に
「おばあちゃんと蓮おばさん、どっちが好き?」と質問すると祖父は答えられなくなります。
そして、そんな祖父と蓮おばさんは結婚することになったのです。
そんなおめでたい矢先、なんと台湾にいる夫から「帰ってくる」と手紙が来るのです。
もちろん2人は動揺します。それぞれ異なった動揺です。心配する祖父に、蓮おばさんは
「年でいうとあなたより上の人よ、とっても真面目な人でね。でもね、あの人台湾に家族がいるのよ。孫が2人もいらっしゃるんですって。
もうずっと昔のことよ。何十年も前に気持ちの整理はついてるわ。」
と語りかけます。
そして、夫が台湾からやってきます。
しかしそれは予想とは全く違う形で再開するのです。
会いに来たのは夫の弟でした。
会いに来る前に、夫は死んでしまったのです。
なので弟が夫の遺骨を持ち帰ってきたのです。
「兄さん、台湾で家族を持ってもずっと中国に帰りたがっていたんだ。そして託されていたんです、自分が死んだら遺骨は義姉さんに戻してほしいって、なので私は台湾からやってきたのです。」
あまりの衝撃に元々体の弱っていた蓮おばさんは体を壊し寝込んでしまいます。
そして、夫の真実を知った蓮おばさんと祖父は2人の結婚を取りやめるのです。
まもなく、蓮おばさんは亡くなってしまいます。祖父が夫の遺骨と一緒に蓮おばさんを埋葬するのです。
蓮おばさんと夫は、長い間離れ離れであったけど、最後にやっと一緒になれたのです。
そしてもう決して離れる事はありません、
蓮おばさんの祈りが成就した気がして、
本当に良かったなと思いました…*
そして、京京は両親の離婚が成立しついに北京へ帰ることになりました。
北京へ帰る京京へ祖父は
「お前の帰る場所はここにある。いつでも帰ってきなさい。そしてこの言葉は母さんにも伝えてくれ。」と最後にお別れを告げます。
2人は互いに京劇の歌を送りたい、京京は北京へ帰っていくのです。
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この映画のタイトル、「心の香り」「心香」は実は仏教用語です。
《心の中の線香を焚く》という意味です。
主人公の家族は京劇を通して繋がっているのに、蓮おばさんを思い出させる仏教用語がタイトルに使われることは、とても感慨深いものです。
心の中の線香を焚く、とはどの様なことなのでしょうか。
祖父や蓮おばさんの心の線香を焚く相手は誰なのでしょうか。何を祈り何を思いうのでしょうか。
そして、私だったら誰を思い、何を祈り、願うのだろうか。
まだまだ未熟で人生経験も浅いので、
見解に至るまでは到底時間がかかりそです。
映画を鑑賞して、タイトルに戻り意味を考える。
実はこれ、とっても難しくて、でも映画の核心に触れるんじゃないかと思います。
余談になりますが、夫婦で同じお墓に入るって素敵ですよね*
(考え方の違いによってはドン引きされますが…笑)
そこである詩を思い出しました。
中国の古代詩の『詩経』に編入されている
「葛生」「撃鼓」という詩です。
この2つの詩は戦争へ行ってしまった旦那を思う妻の詩で、
それぞれ詩中で《偕老同穴》《帰于其墓》と
「今は離れ離れになってしまった、だからせめてお墓で一緒に眠ろう。」と夫婦が最後まで一緒にいることを願っています。
(ドラマ版の世界の中心で愛を叫ぶにも何度か使われている詩なのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね*)
古代詩から見られる通り、中国では夫婦埋葬は古くからある考えなのかもしれませんね。
夫婦は死ぬまで一緒にいるのは普通とされていますけど、死んだ後も一緒にいたいと思う夫婦へ本当にお互いの愛情が深い素敵な夫婦だなって思います😌
そして蓮おばさんにとっての台湾はどのような存在だったのでしょう。
離れた夫が新しい家族と暮らす土地。
おばさんにとっての台湾は未知の土地であり、もしかしたら息を詰めらせたくなる場かもしれません。
蓮おばさんの夫は、台湾のどこでどのような生活をしたのだろう、
ふと考えてしまいました。
私が大好きな台湾も、誰かにとっては悲しい思い出の場所であることもある。
そんな当たり前のことを強く感じさせられました。
かなりズレまくってしまいましたが、「心の香り」は観る人によって捉え方が変わる作品たど思います。
その時置かれた状況にもよって異なると思うので、大人になったらまたゆっくり観たいと思います☺️